朝5時、関空のイスで朝を迎え、軽めの朝食をとりなんやかんやで石垣行きのピーチに乗る。
この三日間の天気予報は芳しくなく、関空も雨、先島諸島も雨予報となっている。
島の天気は変わりやすいと言うし、飛行機が飛ぶなら大丈夫だろうと言い聞かせ、石垣空港へ。
機内では爆睡しており、気付くと着陸30分前であった。
石垣空港 ここからバスで30分ほど移動し、西表島大原港行きの船に乗る。
高校の修学旅行で来て以来。
フェリーで西表島大原港へ向かう。
着いてから八重山そばを食べた。塩加減がちょうど良く、とても美味しくてすぐに平らげてしまった。
レンタカーを借り、スーパーで飲み物や食料を買い込み、宿へと向かう。
今回利用させていただいたのは「カンピラ荘」さん。まさかの1人一部屋で広々と使うことができた。
準備を整えまずはチャマルのポイントへ向かう。採集できる可能性は時期的にも天候的にも低いが、一応見てみようと言うことで。
しかし案の定林床もビチョビチョでクワガタはおろか昆虫の姿も少ない。時折トカゲやサソリモドキが顔を見せるものの、これといった成果は得られなかった。
一度宿へ戻り、夜のヤエマルに備えて装備を整える。西表島の山にはサキシマハブ、ダニ、ヤマビルが生息しているため、いつもより装備を厳重にする。
自分は特にヒルが大の苦手でズボンの下にスパッツ、靴下とスパッツの境目をガムテープ補強、長靴とズボンの裾をガムテープ補強という下半身の素肌露出ゼロの完璧な防御体制を整える。
きっと他の採集者さん達はヤマビルなんて気にしないのだろうが、苦手なものは苦手だから仕方ないw
服の上からヒル下がりのジョニーをかけ、いざ西表の原生林へ。
ヤエマルのポイントへ移動する道中、マングローブを観察する。
フエダイやボラ、スズメダイの中に一際大きな魚がいた。目を凝らしてよく見るとサメであった。
小学生の頃西表島を訪れた際、仲間川に大きなサメがいるのを確認していたが、まさかこんな浅瀬にいるとは思わなかった。おそらくオオメジロザメの幼魚であろう。
小さくてもしっかりとサメの形をしており、見惚れてしまった。
ヤエマルポイントに到着。同業者らしき車が一台ある。やはり最盛期を過ぎているからか人は少ないようだ。
ヤエマルポイントの林道に入ってすぐ、川にぶち当たる。当然、ここを通る以外に方法はないため川を渡っていく。長靴が浸水し、不快極まりない。
明るいうちにスダジイの大木を見つけておきたいので、目ぼしい木をマーキングしながら奥へと進む。そのうち川を何本も越えて浸水なんて気にもしなくなっていた。
18時ごろ、日の入りを迎える。
原生林の中は昼でも薄暗いが、曇天+日没で突然真っ暗になる。しかし大粒の雨も降ってきたので林内が瞬く間に水浸しになる。
また、土壌が粘土質であるため雨が降ると滑る。斜面だとすぐに足を取られ、まっすぐ進むこともままならない。更にはツルアダンなどの植物が行手を阻む。
悪戦苦闘しながら進むこと30分あまり、開けたところに出た。体力をかなり消費し、雨で身体も冷えてきていた。
先の方に大きなスダジイの木がある。
Mが、「あの木はいそうな気がする」と言い出した。俺らヤエマルとったことないやんけと心の中でツッコミながらも同じような感覚に自分も囚われていた。
上手く言葉では言い表せないが「オーラ」のようなものを感じるのである。
他にも同じような木があるのに、なぜか吸い寄せられるようにその木へと向かった。
木の表面をくまなく照らしていく…いない。
木の幹の上の方にも…いない。
自分の前を歩いていたMが木の裏に回った瞬間だった。
ついにその瞬間が訪れる。
「え?なにこれ、えっ?えっ?あ!おったァァァァァ!!!!!」
絶叫が暗闇に響き渡る。
急いで照らす。
そこには夢にまで見たアイツの姿が。数々の採集者達を沼に引き摺り込んだ存在があった。
居たよ、ほんとに居た。
出てきたばかりなのか、泥に塗れていた。
サイズはかなり小さいがそれでも人生初ヤエマルである。
「八重山のルビー」と呼ばれるその姿は確かに赤く、今まで採集してきたどの虫よりも神々しかった。
後ほど宿で計測したが、44ミリの短歯で大歯を採集されている方々からするとリリースサイズであることは間違い無いだろう、だがヤエマルはヤエマル。八重山の原生林で育った本物のワイルドヤエマルである。
強さを増していく雨も、風によって揺れる木々の音も、身体中に打ち付ける雨も忘れて見惚れてしまった。よくぞこんなクソ天気の中居てくれた。
Mと固い握手をし、さらに散策を続ける。
しかし、雨足も強くなり林道から大きく離れるのは危険と判断し、切り上げることにした。
帰り道、ハブを踏みかけた。
林内の景色とほぼ同化しており、見分けがつかない。
やっとの思いで駐車場に出てくることができ、喜びを噛み締める。
宿へと帰る道中にはヤシガニも居た。かなり大きなサイズだ、この大きさになるまで何年かかるのだろうか。
最高の気分だ、こんな台風並みの豪雨の中、よくぞ出てきてくれた。ありがとうヤエマル。
ここで今日は終了となる予定だったが、隣の部屋のMが何やら呼んでいる。
行ってみるとヒルに吸血されたと言っているではないか!!
瞬時に全身に鳥肌が立ち、自分もあらためて吸血されていないかを確認する。自分は幸いにも吸血されていないようだ。
で、肝心のヒルはどこおんの?と聞いたら「そこ」と一言。
キッッッッモ!!!
あかん、気持ち悪すぎる。
とりあえず後でこいつの処理をどうするか決めようと言うことでヤエマルと同じルアーケースにぶち込んだ。(正直めちゃくちゃ嫌だったw)
吸血されたMによると、痛みどころかいつ吸われたのかすら知らないと言う。
ヒルジンってすげえと妙に感心してしまった。
風呂やら飯やら洗濯を済ませ、ヒルの処遇について相談する。
ヒル下がりのジョニーをかけてみようと言うことになり、宿の外の道路でぶっかけてみた。
ヒルはのたうちまわり、すぐに生き絶えた。可哀想なことをしたとは思ったが、吸血したヒルはメスとなり卵を産むためこの辺で増えても困る。
Mが、「俺によって女(メス)になり、俺によって殺されたんやな」などとよくわからないことを言っていたw
何はともあれ無事に1日目を終えることができてよかった。
1日目結果
ヤエヤママルバネクワガタ オス×1